6月24日(第一回)

本年度の第一回授業内容

  ①特許権のフローチャートの確認

  ②産業財産権の概要

  ③特許権の目的・発生

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産業財産権とは特許権実用新案権意匠権商標権のことです。

産業財産権には著作権が含まれません。

そして、各種権利は特許庁の審査を経て、設定登録することにより発生することになります。

また、産業財産権には、各種権利を規律する法律が存在し、特許権は特許法、実用新案権は実用新案法、意匠権は意匠法、商標権は商標法がそれにあたります。

中でも、特許法がその中心にあり、特許法の規定内容が他法に準用されます。

 

国際条約

産業財産権にはパリ条約特許協力条約(PCT)マドリッド協定議定書(マドプロ)TRIPS協定が国際的に大きな役割を果たしています。

パリ条約(1883年~)は工業所有権の国際的保護に関する条約であり、PCT、マドプロにの前提になるものです。PCTは特許の国際協力図るための条約で、商標の国際登録を認める条約がマドプロです。

TRIPS協定はWTOの管轄にあり、パリ条約等を管轄するWIPOとは枠組みが異なります。

しかし、TRIPS協定は著作権等を含むなど、パリ条約より高度な保護水準を定めています。

 

○特許権の目的

特許法の目的は、発明を奨励し、もって、産業の発達に寄与すること(§1)です。その目的の実現のために、発明の保護発明の利用があるわけで、重要なのは、特許権は発明を保護することが目的ではないということ。

 1)発明の保護・・・発明者に、一定期間、業として発明を独占的に付与すること。

  2)発明の利用・・・発明者による発明の開示発明の実施を通じて、公衆に発明利用の道を提供すること。

つまり、特許法は、発明の保護と発明の利用という相反する利益とをたくみに調整し、産業の発達を促さなければならないのです。ということは、産業の発達に寄与することが期待できない発明には特許権は付与されませんし、ましてやその発明に対して独占権を認めることで産業の発達を阻害することが予測される場合は、同様に特許権は付与されません

*━♪━*:。2010年6月30日 第2回 特許権②。:*━♪━*

★本年度第二回目授業内容★(文責:帥(そちの))――――――――――――――

①特許権のフローチャートの復習             

② 発明                            

③産業上利用することができる発明            

④特許法第32条(特許を受けることができない発明) 

⑤発明の新規性 ※途中まで。 →キリがよくなので更新は次回に回して欲しいです。

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【発明】

◆特許法第2条(定義)◆

1.この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

 

〔要件〕

①自然法則を利用したものであること

②技術的思想であること

③創作であること

④高度のものであること

 

[要件の解説]

(1)自然法則を利用したものであること

自然法則

「自然」の領域(自然界)において経験によって見出される法則。

自然科学上の法則に限られない

自然界において、経験上一定の原因によって一定の結果が生ずるとされるもの(経験則)も含む。

自然法則の利用

「自然法則」そのままでは発明にはならず、発明はこれを利用したものでなければならない。

自然法則の利用は、全体としての利用でなければならない。

⇒このことから、次のことがいえる。

 ・発明は、実現可能性があるものでなければならない。

 ・発明は、反復可能性または再現可能性があるものでなければならない。自然法則を利用するものである以上、何回繰り返しても実施することができ、かつ、一定の確実性をもって同一結果を反復できるものであると同時に、発明者以外の第三者も発明者と同様に発明を実施(再現)できるものでなければならない。

(2)技術的思想であること

技術

一定の目的を達成するための具体的手段であって、産業上であると文化上であるとを問わず、実際に利用することができるもの。

「技術」は、知識として他人に伝達できる客観性のあるものでなければならない。

技術的思想

特許法上は、「技術的思想」であれば足り、技術そのものである必要は必ずしもない

発明は、ただちに技術として成立する程度まで具体的である必要は必ずしもない。ただし、少なくとも将来、技術として成立する可能性を有するものでなければならない。

(3)創作であること

「新しさ」を有すること

 創作であるためには、新しさが必要である。

新しさの判断基準は、当該技術的思想の創作時でなければならない。

※特許の要件である「新規性」とは異なる。ここでいう、「「新しさ」を有すること」とは、発明した人の主観的な新しさをいう。

「作り出したもの」であること

創作は新しさと同時に、新しい何ものかを作り出すことが必要である。

作り出すことが自明の事柄でないこと

創作の名に値するものであるためには、単に新しいというだけではなく、さらに進んで従来のものから当然考えられる程度のものが必要である。

(4)高度のものであること

特許法2条1項に規定する「高度のもの」という要件は、実用新案における考案と区別するためのものである。

 

[「発明」でないものの6つの類型]

自然法則自体

自然法則に反するもの

自然法則を利用していないもの

 ・自然法則以外の法則を利用しているもの Ex.)経済法則

 ・人為的な取り決め Ex.)ゲームのルールそれ自体

 ・数学上の公式

 ・人間の精神活動にあたるもの

 ・上記4つのみを利用しているもの

課題の解決が明らかに不可能な手段のみが示されているもの

技術的思想でないもの

 ・技能  Ex.)フォークボールの投球方法

 ・情報の単なる提示

 ・単なる美的創作物  Ex.)絵画

単なる発見であって創作でないもの

 ・発明者が意識してなんらの技術的思想を案出していない天然物 Ex.)鉱石

 ・自然現象等の単なる発見

  ※ただし、天然物から人為的に単離した化学物質や微生物等は創作したものであり、「発明」に該当する。

 

[用途発明]

・用途発明:物の特定の性質(属性)を発見し、その性質をもっぱら利用する発明のことをいう。

 

[特定技術分野]

・コンピュータ・ソフトウエア関連発明

 ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている場合には、当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」と認められる。

・生物関連発明

・医薬発明

 

[発明の種類]

・「発明」は「物の発明」と「方法の発明」とに大別される。

 「方法の発明」は、さらに「物を生産する方法の発明(製法の発明) と「いわゆる単純方法の発明」とに分けられる。

・「物の発明」:発明の構成要件として経時的要素を含まないもの

・「方法の発明」:発明の構成要件中に経時的要素を包含しているもの。

・「物を生産する方法の発明」:その方法を実施した結果物として物が生産されているもの。

・「単純方法の発明」:物の生産を伴わない生産方法以外の方法のこと。

 

[法上の取扱い] 

・出願した発明が、特許法2条1項の「発明」に街頭しないときは、「産業上利用することができる発明」とは認められない。

 ⇒特許法29条1項柱書違反として次のようになる。

   ①出願拒絶の理由(特49条2号)

   ②特許無効の理由(特123条1項2号)

 

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産業上利用することができる発明

◆特許法第29条(特許の要件)◆

1.産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。

 

・特許法では、産業の発明という第1条の法目的を達成するために発明を保護する。

したがって、産業の発達に寄与する発明のみを保護すべきである。

そこで、学術的または実験的にのみ利用できるような発明等を特許の対象から排除するため、特許法第29条1項柱書に「産業上利用することができる発明を特許要件として規定した。

 

[「産業上利用することができる発明」の解釈]

(1)産業

 主として生産業を意味する。

 ここにいう「産業」は広義に解釈され、次のものも「産業」に含まれる。

 ・産業を伴わない補助産業的なもの Ex.)運輸業、交通業

 ・サービス業 Ex.)通信業、保険金融業

(2)利用

 特許法2条3項1号~3号に規定する「実施」を意味する。

(3)産業上利用することができる発明」 ⇒該当しないもの3つ

 学術的、実験的にのみ利用することができるような発明等は排除することを意味する。

 次の①~③は、「産業上利用することができる発明」に該当しない。

⇒①人間を手術、治療または診断する方法

 ②その発明が業として利用できない発明

 (ⅰ)喫煙方法のように個人的にのみ利用される発明

 ※ただし、「髪にウェーブをかける方法」のように、個人的に利用され得るものであっても、業(美容業)として利用できる発明であれば「産業上利用することができる発明」に該当する

 (ⅱ)学術的又は実験的にのみ利用される発明

  ※ただし、実験に利用されるものであっても、市販または営業の可能性があるものは「産業上利用することができる発明」に該当する

 ③実際上、明らかに実施できない発明

 

【法上の取扱い】

・「産業上利用することができる発明」(特29条1項柱書)に該当するか否かは、審査官が判断する特許要件の1つである。

⇒次のように扱われる。

 ①出願された発明が「産業上利用することができる発明」に該当するとき

 →他の全ての特許要件の具備を条件に設定登録され、特許権が発生する。(特66条、68条)

 ②出願された発明が「産業上利用することができる発明」にがいとうしないとき

 →特許法29条1項柱書違反として次のようになる。

   ①出願拒絶の理由(特49条2号)

   ②特許無効の理由(特123条1項2号)

   ③情報提供(特施法13条の2第1項2号)の理由

 

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【特許法第32条(特許を受けることができない発明)】

◆特許法第32条(特許を受けることができない発明)◆

公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛星を害するおそれがある発明については、第29条の規定に関わらず、特許を受けることができない。

 

・特許法は、第1条より、わが国の産業の発達に寄与することを目的とするものである以上、公益の増進を図るべきことは当然である。

 

【規定の内容】

(1)「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある発明」⇒略して、「公序良俗」

・かかる発明は、たとえ産業上利用することができる発明であっても、そのような産業の発達を図るべきでない。

(2)公序良俗の判断基準

本来の目的が公序良俗を害する場合

公序良俗を害する可能性が非常に高い場合

・発明の目的と構成からみて、公序良俗を害する目的に使用する可能性を何人も極めて容易に見いだすことができ、かつ、実際にそのように使用するおそれが多分にあると認められるものは、公序良俗とされる。

正常でない利用により公序良俗を害する場合

※発明の本体の目的において公序良俗を害するおそれはないが、使用の仕方が異常なために公序良俗を害するおそれがあるものは、公序良俗違反とされない。

その他

(3)公衆の衛生を害するおそれがある発明」の判断基準

製造された物

・製造方法自体が公衆の衛生を害するおそれが無くても、その方法によって製造された物が公衆の衛星を害するおそれがあるときは、その発明は公衆衛生違反とされる。

 有益な目的と公衆衛生違反

・発明の本体の有益な目的を達成するにも関わらず、使用の結果、公衆の衛生を害するおそれがあるもの。

(ⅰ)その害を除去する手段がある場合は、公衆衛生違反に該当しない。

(ⅱ)その害を除去する手段がない場合は、そのプラスマイナスを比較考量して判断する。

おそれ」が不明な場合

・審査時に、使用の結果のおそれの有無が不明な発明については、その有無が不明のまま特許される。

禁制品の場合

・目的を異にする他の法律によって製造や販売、使用が禁止されていることを根拠に公衆衛生違反を判断するべきでない。

*━♪━*:。2010年7月8日 第3回 特許権③。:*━♪━*

★本年度第三回目授業内容★(文責:FUJII )――――――――――――――

①発明の新規性

②出願書類

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【新規性】

 

産業上利用することができる発明がすべて保護されるわけではなく、保護する発明には新規性が必要になります。というのも、国が特許制度を採用して発明者に独占権を付与する大きな理由の1つは、発明が秘密のまま保持されること(発明の秘蔵化)をおそれ、これを公開させることにあるからです。つまり、既に公開されている発明に対しては、独占権を付与する必要がありません。

 

 

●新規性のある発明とは・・・

 新規性を有しない発明の範囲を明確にするための規定が特許法29条1貢1号~3号にあります。この条文には新規性がない発明が列挙されており、このいずれにも該当しなければ新規性のある発明となります。次の内容は1号~3号の記述です。

  1. 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明  →公知
  2. 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明 →公用
  3. 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明  →公知

 

①公知・・・特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明は新規性がなく、特許を受けることができない。

(1)新規性判断の時期的・地域的基準

「特許出願前に」と規定されていることから、新規性判断の時期的基準は「特許出願の時」である。発明を完成したときでもなければ、発明を公開した時でもありません。しかも、「特許出願の時」とは、時分まで考慮されます。また、新規性判断の地域的基準は「世界」であるため、日本国内では未だ公知でないものの、特許出願前に外国で公知になった場合には、その発明には新規性がないことになります。

 

※「特許出願の時」とはオンライン出願の場合には、到達主義がとられ、「特許庁の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録が完了した時点」をもって特許庁に到達したものとみなされます。逆に郵送又は信書便はの役務により提出した場合は発信主義がとられます。

 

(2)公然

公然とは、秘密を脱した状態をいい、発明者又は出願人の秘密にする意思の有無は関係しない。だから、守秘義務を保つ義務を有しない者(その発明にとくに黙秘の義務を課された場合だけでなく、社会通念上又は商慣習上、秘密扱いにすることが暗黙のうちに求められ、かつ、これを期待することができると認むべき関係又は状況にある者を含む。)に知られれば、もちろんそれは少数であっても、新規性を失います。特許庁の職員、工場の従業員、発注会社と受注会社の担当者のみが出席した会議の参加者に知られても、「公然」にはならない。

●「公然知られた」とは、実際に公然知られたことを必要とし、公然知られ得る状態では足りないと解する。

●「知られた」とは、発明が技術的に理解されたことを必要とする

 

②公用・・・特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明は新規性がなく、その発明については特許を受けることができない。

 公然実施されたとは、発明の内容が公然知られる状況下で、又は公然知られるおそれのある状況下で実施をされたことをいう。

 

③文献公知・・・特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明は新規性がなく、その発明については特許を受けることができない。

●刊行物とは・・・公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された文書、図面その他これに類する情報伝達体公開性情報性頒布性を有する。

(1)公開性

公開を目的としたもののことをいい、公開を目的とせずに内容に秘密性がある秘密出版物は「刊行物」でない。

(2)情報性

内容自体が広く第三者に情報として流通されるべき性質のことをいう。

(3)頒布

多くの人に行き渡るように配ることをいい、、まだ発行者の手元にあって配布に至らない刊行物は「配布された刊行物」ではない。現実に誰かがその刊行物を見たという事実を必要としないので、刊行物を不特定人が見え得るような状態に置けば十分である。

 

インターネット公知・・・特許出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明は新規性がなく、その発明については特許を受けることができない。現実に誰かがその情報を見たという事実を必要としない。

電気通信回線とは・・・有線又は無線により双方向に通信可能な電気手段をいう。一方向からしか情報を通信できないもの(例:テレビ)は除かれる。

 

 

【出願書類】

特許を受けるためには、発明を完成させたというだけでは足りず、その発明について特許出願を行う必要があり、書面によらなければなりません。(=書面主義)

 

提出する書類は大きく五つあり、以下の通りです。

①願書

②明細書

③特許請求の範囲

④図面

⑤要約書

 

それぞれには、役割があり、簡単に触れると

②明細書は技術文献としての役割。

③特許請求の範囲はとしての役割を持ち、保護範囲的機能、構成要件的機能があります。

 

それぞれの書面の詳細な説明については、煩雑になるため、省略します。 

 

 

                                                 以上。

 

 

 

*━♪━*:。2010年8月5日 第6回 特許権⑥。:*━♪━*

★本年度第6回目授業内容★(文責:FUJII )――――――――――――――

①発明の単一性

 

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【発明の単一性】

発明の単一性とは・・・1の願書で出願できる発明の範囲をいう。特許法の昭和62年の改正により、一発明一出願制を廃し、一定の関係を有する複数の発明は1の出願においてできるようにし、発明の単一性の範囲を拡大した。

  (関係条文:特許法第37条,特許法施行規則第25の8)

 

○趣旨

 近年の技術開発の高度化、複雑化に伴い、開発の成果が多様な形で密接に関連することが多い。そこで、発明の単位ごとに出願することで起こる隙間や重複により、十分な発明の保護が図れないことを恐れ、また、将来の技術動向等に応じた出願をすみやかに行えるようにすること、出願手続きの簡素化、関係者の負担軽減を図ることなどの必要性に迫られたので、発明の単一性の範囲を拡大した。

 結果、国際的権利取得に係る出願人の負担を軽減し、その円滑化を図るべく、発明の単一性の要件を国際的に調和させる改正がなされた。

 

○特許法第37条

「2以上の発明については、経済産業省令で定める技術的関係を有することにより発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するときは、1の願書で特許出願することができる。」

ここでは、技術的関係が重要になるが、その具体的要件は特許法施行規則第25の8に委任されている。

 

○発明の単一性の要件

2以上の発明が一定の「技術的関係」を有していれば、単一性の要件を満たす。

 

「技術的関係」とは、2以上の発明が 単一の一般的発明概念を形成するように連関している技術的関係のこと。

単一の一般的発明概念を形成するように連関している技術的関係にあるかを判断するためには2以上の発明が①同一の特別な技術的特徴又は②対応する特別な技術的特徴を有しているかどうかである。

 

技術的特徴とは、特許出願人が発明を特定するために必要な事項として請求項に記載した事項の内で、発明を技術的に特定するもの。

特別な技術的関係とは、その技術的特徴が、先行技術に対する貢献をもたらすものである。

 

○発明の単一性の判断の考え方

・対象:通常は特許請求の範囲に記載された「請求項に係る発明」同士の関係。

・具体的な判断(A → B)

A:各請求項に係る発明の「特別な技術的特徴」を認定し、これらの「特別な技術的特徴」が同一のもの又は対応するものかどうかを判断する。同一又は対応する特別な技術的が存在しなければ、発明の単一性の要件を満たさない。

B:「特別な技術的特徴」としたものが発明の先行技術に対する先行をもたらすものでないことが明らかとなった場合には、ほかに同一の又は特別な技術的特徴が存在しない限り、事後的に発明の単一性の要件を満たさなくなる

 

○発明の単一性の判断類型

①基本的な判断類型

(1)同一の特別な技術的特徴を有する場合

(2)対応する特別な技術的特徴を有する場合

 

②特別の関係にある場合の判断類型

(1)物とその物を生産する方法、物とその物を生産する機械、器具、装置、その他の物

(2)物とその物を使用する方法、物とその物の特定の性質をもっぱら利用する物

(3)物とその物を取り扱う方法、物とその物を取り扱う物

(4)方法とその方法の実施に直接使用する機械、器具、装置、その他の物

 

○法上の取り扱い

各請求項について発明の単一性がない場合は、特許法37条違反として出願拒絶の理由(特49条4号)となる。しかし、発明の単一性の要件(特37条)は、特許無効の理由(特123条)とはならない

 

特許出願人は、発明の単一性がないとの拒絶理由wp解消するために、通常、出願の分割(特44条1項)を行う。また、手続きの補正(特17条)を行う場合がある。

 

以上。

*━♪━*:。夏期休暇 特許権⑦。:*━♪━*

★本年度第7回目授業内容★(文責:帥。 )――――――――――――――

①特許権の効力(原則)

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<お詫び>

夏期休暇中の活動についての更新が大幅に遅れてしまい大変申し訳ございませんでした。

自分に託された範囲だけとなりますが、夏期休暇に行った授業内容について更新させて頂きます。

 

特許権の効力(原則)

◆特許法第68条(特許権の効力)◆

特許権者は、業として特許発明の実施する権利を専有する

 

(1)内容

・特許権者は、業として特許発明を独占的に実施する権利を有する。

①「特許発明」

  …特許を受けている発明をいう。

②「業として」

  …広く「事業として」の意味。

   (ⅰ)営利目的

   「業として」の実施は、必ずしも営利を目的とする場合に限られない。

   つまり、営利を目的にしなくても「業として」に該当する場合がある。

   (ⅱ)家庭的個人的な目的

   ※家庭的個人的な目的で製造し又は使用することは、「業としての実施」ではない。

   (ⅲ)反復継続

   「業としての実施」は反復継続であることを要しない。

   ただ1回の実施であっても「業としての実施」である。

③「権利を専有する」

 …他人を排して、権利者のみが独占的に実施する権利を有するという意味。

 

(2)実施の意義

①「実施」を定義する意義

 所有権は、物の使用・収益・処分の権原であるが、あえて使用の定義を設ける必要はない。なぜならば、物の使用には必ず占有が必要であり、かつ、使用の態様は常識の域を超えないであるからである。

 一方、特許権は発明という無体の技術的思想の独占的実施権であり、その内容は必ずしも明確ではない。そのため、特許法は、権利の及ぶ範囲を明確にするために、実施の定義規定を設けている。

②実施の内容

「実施」とは、特許法2条3項に定める各行為を言う。

同項は1号~3号に区分けされており、発明の種類によって特許権の効力範囲を分けている。

③物の発明の場合

物(プログラム等を含む)の発明に当たっては、次の6つの行為をいう。

(ⅰ)その物を生産する行為

(ⅱ)その物を使用する行為

(ⅲ)その物を譲渡する行為

(ⅳ)その物を輸出する行為

(ⅴ)その物を輸入する行為

(ⅵ)その物を譲渡等の申出をする行為

④単純方法の発明の場合

単純方法の発明にあたっては、その方法の使用をする行為をいう。

⑤生産方法の場合

物(プログラム等を含む)の生産する方法に当たっては、次の6つの行為をいう。

(ⅰ)その方法の使用をする行為

(ⅱ)その方法により生産した物を使用する行為

(ⅲ)その方法により生産した物を譲渡等をする行為

(ⅳ)その方法により生産した物を輸出する行為

(ⅴ)その方法により生産した物を輸入する行為

(ⅵ)その方法により生産した物の譲渡等の申出をする行為

*━♪━*:。夏期休暇 特許権⑧。:*━♪━*

★本年度第8回目授業内容★(文責:石橋)--------------------------

Ⅰ出願公開

Ⅱ補償金請求権

Ⅲ出願審査請求

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Ⅰ出願公開

◆特許法第64条(出願公開)◆

特許庁長官は、特許出願の日から1年6月を経過したときは、特許掲載公報の発行をしたものを除き、その特許出願について出願公開をしなければならない。第64条の2第1項に規定する出願公開の請求があったときも、同様とする。

 

ⅰ定義

 上記特許法第64条、青字部分のことを条件に、審査の段階のいかんを問わず特許出願の内容を公衆に知らせること。

 

ⅱ趣旨

 従来の伝統的審査主義(=出願のすべてを審査する主義)では近年の出願件数の増大、出願内容の高度化・複雑化により審査の長期化を招き、出願内容の公表が遅れるに至り結果、同一技術の重複研究・重複投資・重複出願を招き、法目的に反することとなった。

 よって審査と切り離して出願公開を早期に公開するため、出願公開が行われている。また審査自体の促進のため出願審査請求制度(特許法第48条の2)が採用されている。

 

ⅲ内容

時期:特許出願の日から1年6月を経過したとき。

対象:①特許掲載広報の発行がされていない特許出願。

 ②出願公開前に特許出願が取下げ、放棄あるいは却下され又は拒絶査定が確定していないとき。(この場合、既に特許庁に係属していない)

方法:所定事項を特許公報(公開公報)に掲載する。

 

ⅳ出願公開の請求

 請求があったときは、出願から1年6月が経過する前であっても出願公開される。(特許法第64条1項後段)早期出願公開制度

  

 出願公開請求がなされた後、公開公報の発行までの間に出願の取下げ、放棄、拒絶査定の確定等があったとしても、必ず出願公開が行われる。よってこのような出願は拡大された範囲の先願としての地位を有する。(特許法第29条の2)

 

①公開請求の内容

 ・特許出願人のみが出願公開請求をすることができる。

 ・出願公開請求が出来ない場合

  1)既に出願公開されている場合

  2)提出すべき優先権証明書又はそれに代わる書面が未提出の場合

  3)外国語書面出願の場合に提出すべき外国語書面の翻訳文が未提出の場合

 

② 公開請求の取下げは出来ない。

 

ⅴ効果

①保証金請求権

②拡大された範囲の先願

③優先審査

④情報提供

⑤調査依頼

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Ⅱ保証金請求権

ⅰ定義

 出願人が出願公開後、特許権の設定登録前に業として特許出願に係る発明を実施した者に対し、補償金の支払いを請求することができる権利。(特許法第65条1項)

 

ⅱ趣旨

 一般公衆に出願内容を知らせるものであるが、第三者が出願内容を知り、実施が可能となりうるため、出願人の損失につながる恐れがある。一方、出願公開段階では未審査ゆえに特許権同様の強力な権利を与えるのは第三者への過大な不利益となる。よって特許出願人の損失填補を目的として、この権利を認めた。

 

ⅲ保証金請求権の発生(原則)

 出願公開後に「警告」をしたことが要される。

 

【方法】

 ・特許請求の範囲に記載されている発明の内容を記載した書面を提示する。

 ・出願公開後に特許請求の範囲に補正を行った場合は、補正後の発明内容を記載した書

  面を提示する。

 ・警告後の行為につき保証金請求権を行使できる。

 ・具体的な特定の相手方が必要。

 

⇒保証金請求権の範囲を明確にするため警告が必要。

*警告は相手方を悪意に陥れるための通知であるので、将来の保証金請求権行使の際の悪意の証明方法としかなりえない。 

 

ⅲ行使

内容:実施料相当額の補償金の支払いの請求を行うことができる

時期:特許権の設定登録後

期間:①特許権の設定登録の日から3年

    ②損害および加害者を知った時が特許権の設定登録後であれば、そのときから3年

 

⇒保証金請求権の行使は特許権の行使を妨げない。(消尽を主張させないため)

 出願公開後に特許出願の放棄、取下げ、却下がなされたとき、又は拒絶の確定があったとき等は保証金請求権は初めから生じなかったものとみなされる。

 

ⅳ特許法の準用

 保証金請求権の行使に関し、侵害とみなす行為、生産方法の推定、書類の提出につき特許権侵害の場合の規定は準用。

 差止請求権、損害額の推定等、過失の推定、相当な損害額の認定、信用回復の措置は準用していない。

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Ⅲ出願審査請求

ⅰ定義

 特許出願についてその出願が特許要件を具備しているか否かの実態審査を受けるために必要な手続き。(特許法第48条の2)出願とは別に特許庁長官に対して行う。

 

ⅱ趣旨

 出願公開と同様の法目的との相違、権利の有名無実化、多くの防衛的出願・誤算的出願という実態があるため、審査対象を減少させて審査の促進を図っている。

 

ⅲ内容

時期:実際に特許出願がされた日から3年以内に出願審査請求できる。(特許法48条の3第1項)

 

 *ただし、特許出願の分割に係る新たな特許出願は期間経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更の日から30日以内に限り、出願審査請求できる。

 

請求できる者:特許出願人以外の第三者(利害関係人でなくてもよい)も請求できる。(特許法第48条の3第1項)

 

ⅳ効果

①出願順ではなく、出願審査請求の順に審査される。

②【例外】

1)優先審査制度(特許法第48条の6)

 出願人又は、当該特許出願に係る発明を業としている第三者が優先審査に関する事情説明書を提出する。

 

2)早期審査制度

 一定の要件のもと出願人からの事情説明書による申請を受けて審査を通常より早期に行うようにする。条文規定なし。

 

③出願審査請求があった旨が、特許公報に掲載される。

④第三者からの出願審査請求があったときは、特許庁長官がその旨を特許出願人に通知する。

⑤出願審査請求は審査開始の条件にすぎないので、取り下げることができない。

⑥特許出願の日から3年以内に出願審査の請求をしないときは、その特許出願は取り下げたものとみなされる。(=取下擬制)

 

*━♪━*:。2010年10月分 特許権21「手続の補正」。:*━♪━*

更新を怠っていて申し訳ございません!汗

只今、自分の弁理士試験の勉強もかねて来年度に使おうと思っているレジュメを作成しています。

そこでこれからは自分の担当時には編集したデータをここのページでアップしていこうと思っています。

レジュメを作るのがすっごく下手で、テキストの内容を自分の見やすいように再編集したようなものになっていますが、どうぞご了承ください。

また、1単元につき編集時間が頑張って4時間~6時間かかるため、更新はスローペースになってしまいますが、出来次第更新していこうと思います。

by帥。

 

 

 

【手続の補正】文責:帥。)

kp.268289/条文:特許法17条・17条の2・17条の317条の4

 

《概要》

[手続の補正]

特許庁へ手続についてその内容の補充又は訂正をすること

 手続きが不適法であったり、書類が不明瞭であったりしたときに、手続きや書類を完全なものにするために行うもの。

・「手続」:特許出願、請求その他特許に関する手続きのこと。(特3条②)

  ※補正は、原則として、手続補正書を提出することによって行われる。(17条④)

 

[補正を認める必要性]

 ・手続の円滑迅速な進行を図るためには、はじめから完全な内容の書類を提出することが

最も望ましい。

  しかし、先願主義を採用する以上、実際問題として当初から完全なものを望みえない場合も少なくない。

  そこで、事件が特許庁に係属している場合には補正をすることができることとした。

(17条①)

・「事件が特許庁に係属している場合」:特定の事件について、特許庁がそれを処理するた

めに必要な行為をしなければならない状態が現に

存在すること。

 

[補正の分類]

    補正命令による補正と自発補正

()補正命令による補正(方式補正)

  ・特許庁長官が、手続をした者に対して相当の期間を指定して補正すべきことを命

じた場合において(17条③)、これに応じて行う補正のこと。

指定された期間内に限って補正できるにすぎず(同項)、これに応じないときは補正

が却下され得る(18条①)

 ()自発補正

  ・手続をした者が自発的に行う補正のこと。(17条①)

   事件が特許庁に係属している場合に、原則として補正できる。(同項本文)


    方式補正と実態補正

 ()方式補正

  ・書類の方式上の不備について補充訂正すること。

   補正命令による補正の場合自発補正の場合とがある。

 ()実体補正

  ・書類の内容的な不備について補充訂正すること。 

Ex.)明細書や特許請求の範囲の補正 

   ※実体補正は自発補正の場合に限られるが、時期的に制限されており、事件が特許

庁に係属しているときでも出来ない場合がある(17条①但書)


    一般補正と誤訳訂正

 ()一般補正(≒実体補正)

  ・特許出願について行う実体補正のこと。

   一般補正という言い方は、外国語書面出願や外国語特許出願について誤訳訂正を

積極的に除外する意図で使われるのが通例。

 ()誤訳訂正

  ・外国語特許出願や外国語書面出願について、誤訳の訂正を目的として行う実体補正

のこと。(特17条の2②、184条の12)

 ※一般補正と誤訳訂正とでは、補正できる範囲等が異なるため、このように2つの言い

方がある。

 


≪実体補正≫

[補正できる者]

・特許出願人。(17条の2①、17条の3)

 

[補正の対象]

補正の対象は以下の通り。(特17条①但書)

    明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書

    訂正にかかる明細書、特許請求の範囲及び図面

 

[明細書、特許請求の範囲または図面の補正ができる時期] 条文:特17条の2①

〈原則〉

・特許査定の謄本送達に、補正をすることができる。(特17条の2①本文)

〈例外〉

・審査において、いったん拒絶理由通知(特50条)を受けた後は、所定の場合に限り補正が認められる。(特17条の2①但書)

 (理由)手続きの補正(手数料の納付を除く)をするには、次条②に規定する場合を除き、手続補正書を提出

しなければならない。

拒絶理由通知を受けるまで、又は、拒絶理由通知を受けることなく特許査定の謄本の送

達があるまでは、いつでも補正することができる

そして、拒絶理由通知を受けた後においては、補正できる時期が次の①~④の場合に限

られる(17条の2①但書1号~4)

 

   最初の拒絶理由通知を受けた場合にその指定期間内にするとき 

・通知され拒絶理由やその他の不備を解消する機会を、特許出願人に与えるために

規定したもの。

   ・「最初の拒絶理由通知」:原則として、特許出願人に初めて指摘する拒絶理由を通知

するもの。

   ・「指定期間」:拒絶理由通知において指定された期間、すなわち、意見書提出期間で

ある。(50)

   拒絶理由通知を受けた後に先行技術文献情報開示要件違反の通知(特48条の7)を受けた場合に、その指定期間内にするとき 

・先行技術文献情報開示要件違反の通知(いわゆる事前通知)は、最初の拒絶理由通

知のになされる場合がほとんどと考えられるが、そうではない場合(すなわち拒

絶理由通知のになされる場合)もあり得るので、規定したもの。

   最後の拒絶理由通知を受けた場合にその指定期間内にするとき 

・最後の拒絶理由通知を受けた場合には、補正できる範囲が最初の拒絶理由通知の場

合よりも制限されることから、最初の拒絶理由通知の場合とは別に規定されたもの。

   ・「最後の拒絶理由通知」原則として、最初の拒絶理由通知に対する応答時の補正に

よって通知することが必要になった拒絶理由のみを通知するものをいう。

   拒絶査定不服審判(特122条①)を請求した場合にその審判請求と同時にするとき

・たとえば、審査官の示した拒絶理由との関係ではこの程度特許請求の範囲を減縮す

ればよいと判断して補正したが、その程度の補正ではやはり拒絶理由が解消せず拒

絶査定がなされた場合、単にその拒絶査定に不服であるとして審判を請求するだけ

でなく、その際もう一度、審査官の示した最終的判断にもとづいて補正を認めてほ

しい、という実務上の要望に応じたもの。

 


≪補正制限≫

[新規事項の追加の禁止] 条文:17条の2③

    内容

 ・補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項(当初

明細書等)の範囲内においてしなければならない。

 ・当初明細書等に記載した事項の範囲を超えた補正は、「新規事項の追加」といわれる


② 趣旨

・明細書、特許請求の範囲又は図面は、審査対象を特定するとともに、技術文献および権利書としての使命を果たすべきものであるから、出願当初から完全に記載されていることが望ましい。

   しかし、無形の記述思想である発明(2条②)を当初から完全に記載することは一般的に困難であり、出願を急ぐ先願主義のもとではなおさらである。

   したがって、明細書等について一切補正を認めなければ、当初の明細等に記載されている発明にもかかわらず、特許を受けられないことにもなり、出願人に極めて酷であり、発明保護の趣旨に反する。(1)

・一方、なんらの制限もなく補正を認めるのでは、補正の効果は出願時まで遡及するため、先願主義に反し、「又」は、事務手続の流れを乱して出願の処理を遅らせる結果を生ずることにもなる。

   そこで、出願人の利益を第三者の不利益及び事務処理上の不都合を比較考量し、一定の内容的及び時期的制限のもとで明細書の補正を認めている。(17条等)

 

③ 基本的な考え方

 ()当初明細書等に記載した事項の範囲を超える内容を含む補正(すなわち新規事項を含む補正)は、許されない

   →言い換えれば、新規事項を追加しない範囲であれば、明細書等の補正をすることができる

()定義

  ・「当初明細書等に記載した事項」:「当初明細書等に明示的に記載された事項」だけで

はなく、明示的な記載がなくても、当初明細書等

に明示的な記載がないが「当初明細書等の記載か

ら自明な事項」も含まれる。

・「当初明細書等の記載から自明な事項」:当初明細書等に記載がなくても、これに接

した当業者であれば、出願時の技術常識に

照らして、その意味であることが明らかであって、その事項がそこに記載されているのと同然であると理解する事項を言う。

 

④ 特許請求の範囲の補正

・補正の特許請求の範囲に記載された発明特定事項が、当初明細書等に記載した事項の範囲を超える内容を含む場合は、補正は許されない(17条の2)

 

⑤ 発明の詳細な説明の補正

 ()一般原則

  ・補正発明の詳細な説明に記載された事項が、当初明細書等に記載した事項の範囲を超える内容を含む場合は、補正は許されない(17条の2)

 ()先行技術文献の内容の追加

  ・事前通知(48条の7)により先行技術文献情報(36条④2)の記載が求められた場合に、発明の詳細な説明に先行技術文献情報を追加する補正は、通常、第三者が不足の利益を受けることがないので、許される

    しかし、出願にかかる発明の対比等、発明の評価に関する情報や発明の実施に関する情報を追加する補正や、先行技術文献に記載された内容を追加して特36条④1号の不備を解消する補正は、許されない

 

⑥ 図面の補正

・図面の補正であっても、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであれ

ば、許される(17条の2)

 しかし、補正後の図面は、一般に、当初明細書等に記載した事項を超える内容を含む

ことが多く、新規事項の追加となるおそれがある。

 

[いわゆるシフト補正の禁止] 条文:17条の2④

① 内容

・最初の拒絶理由通知(一次審査の結果)を受けた後に、特許請求の範囲を補正する場合に

は、補正の前後にわたる内容が発明の単一性を満たすものであることが求められる。

(17条の2)

・「発明の技術的特徴を変更する補正」:この補正前の特許請求の範囲の発明のうち、拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、拒絶理由通知後に補正された発明とが、同一のまたは対応する特別な技術的特徴を有しないことにより、発明の単一性の要件を満たさなくなるような補正のこと。俗にいう、「シフト補正」のこと。

すなわち、いったん拒絶理由通知を受けると、審査の対象を技術的特徴の異なる別発明に変更する補正が禁止される


② 趣旨

1の願書で特許出願することができる発明は、発明の単一性を満たす範囲に制限されて

いる。(37)

 しかしながら、拒絶理由通知をした後に、特許請求の範囲についてこのような制限を

越える自由な補正が認められると、拒絶理由通知後の審査において、それまで行った先

行技術調査・審査結果を有効に活用することができず、先行技術調査・審査のやり直し

となるような補正が行われる場合がある。

 このような補正が行われると、迅速・的確な権利付与に支障が生じるばかりではなく、

出願間の取扱いの公平性も十分に確保されないこととなるため、拒絶理由通知後の特許

請求の範囲の補正に関しても、1の願書で特許出願することができる発明の範囲につい

ての制限と同様の制限を設けることとした。

 

③ 基本的な考え方

 ()17条の2④は、発明の特別な技術的特徴を変更する補正を禁止する規定であり、発明の単一性の用件を補正後の特許請求の範囲の発明にまで拡張するものである。

 ()発明の特別な技術的特徴を変更する補正であるか否かの判断は、補正前の特許請求の範囲の新規性・進歩性等の特許要件についての審査が行われたすべての発明と、補正後の特許請求の範囲のすべての発明とが、全体として発明の単一性の要件を満たすか否か、すなわち同一の又は対応する特別な技術的特徴を有しているか否かにより行う。

 

[最後の拒絶理由通知後の特許請求の範囲についての補正] 条文:特17条の2⑤・⑥

① 内容

・特許請求の範囲を補正する場合において、補正の時期が次の3つのいずれかに該当する

 ときには、補正できる範囲が一段と制限される。(17条の2)

()最初の拒絶理由通知を受ける際に(同条①但書1)、併せて特50条の2による通   
  知も受けた場合の補正

()最後の拒絶理由通知を受けた場合にする補正(同条①但書3)

()拒絶査定不服審判を請求した場合に、その審判請求と同時にする補正(同条①但書4)

つまり、上記()()のいずれかの場合には、新規事項の追加(同条③)及び発明の特

別な技術的特徴を変更する補正(同条④)が禁止されるのみならず、さらに補正制限が加

重される


② 趣旨

・発明の保護を十全に図るという特許制度の基本目的を考慮しつつ、迅速・的確な権利付

  与を確保する審査手続を確立するために、最後の拒絶理由通知に対する補正は、すでに

行った審査結果を有効に活用できる範囲内で行うものとした。


③ 制限の具体的内容

・特許請求の範囲について補正できる範囲は、次の4つのいずれかの目的に限られる。


()請求項の削除(同条⑤1)

()特許請求の範囲の限定的減縮(同項2)

()誤記の訂正(17条の23)

()明瞭でない記載の釈明(17条の24)


上記4つの目的のいずれかであれば、審査官は、すでに行った審査の結果を有効に活用

して、補正された発明の審査の行うことができるため、迅速、的確かつ公平な権利付与

が達成されるとともに、制度の国際調和も達成されることとなる。 

 

() 請求項の削除

・特許請求の範囲に記載された複数の請求工のうちの一部の請求項を削除する補正は、再度の審査・審理を必要としないことから許容することとした。


() 特許請求の範囲の限定的減縮

(a) 趣旨

  ・特許請求の範囲の減縮に相当する補正のうち、発明の産業上の利用分野及び解決し

ようとする課題を変更しないで発明特定事項を限定する補正は、審査・審理の対象を大幅に変更するものではなく、一般的には従前の審査結果を利用できるものと考えられることから、このような補正を許容することとした。

 (b) 限定的減縮に適合する要件

  ・特許請求の範囲の補正が、特17条の22号に該当するためには、次の3つの要  

   件を満たさなければならない。


()特許請求の範囲の減縮であること

()補正前の請求項に記載された発明の発明特定事項の限定であること

()補正前と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であること(同項かっこ書)


(c) 「限定する」の解釈

  ・「発明を特定するための事項を「限定する」補正」とは、補正前の請求項における「発

明を特定するための事項」の1つ以上を、概念的により下位の「発明を特定するた

めの事項」とする補正をいう。

  ・特許請求の範囲には、発明を特定するために必要な事項の「すべて」を記載しなけ

ればならないが(36条⑤)最後の拒絶理由通知後の特許請求の範囲の補正は、特

許請求の範囲の減縮であって、補正前の請求項に記載した事項「すべて」のうちの

個々の事項を限定するものでなければならない

 (d) 独立して特許可能

  ・特許請求の範囲の減縮に該当する補正と認められても、補正後の請求項に記載され

ている事項により特定される発明が特許可能なものでなければならない。

(理由)特許請求の範囲の減縮に該当する補正であっても、出願に係る発明が特許を受

けることができないものである場合には、再度の拒絶理由通知が必要となり、その後に補正がなされると、再度の審査・審理が必要となる。

そのため、審査の迅速性及び出願間の取扱いの公平性の確保の観点から、特許を受けることができるようにする補正に限って認めることとした。

 

() 誤記の訂正

 ・「誤記の訂正」:本体その意であることが明細書、特許請求の範囲又は図面の記載など

から明らかな字句・語句の誤りを、その意味内容の字句・語句に正すこと。

 ・記載不備についての軽微な補正は、これを認めても審査・審理の対象の変更するもの

ではなく、またこれを認めることとしなければ、出願人は拒絶理由に対応することが困難であり、発明の保護の観点からも適切でないことから、誤記の訂正と認められる補正を許容することとしたものである。


() 明瞭でない記載の釈明

 (a) 定義

  ・「明瞭でない記載」:請求項の記載そのものが、文理上、意味が不明瞭であること、

請求項自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じていること、又は、請求項自体の記載は明瞭であるが、請求項に記載した発明が、技術的に正確に特定されず不明瞭であること等をいう。

  ・「釈明」:それらの不明瞭さを正して、その記載本来の意味内容を明らかにすること。

 (b) 拒絶の理由に示した事項との関係(同号かっこ書)

  ・拒絶理由通知で指摘していなかった事項についての補正によって、既に審査・審理

した部分が補正され、新たな拒絶理由が生じることを防止するため、「明瞭でない記載の釈明」は、拒絶理由通知で指摘された拒絶の理由に示す事項についてするものに限られている

 


《効果》

[補正が適法な場合]

・補正の効果が出願時まで遡及し、補正後の内容で手続されたものと扱われる

 したがって、その補正後における明細書、特許請求の範囲又は図面により特許出願がされたものとみなされ、補正後の内容で審査される

 

[補正が時期的要件に違反する場合]

・不適法な手続きであってその補正をすることができないものとして、その補正手続が却下される。(18条の2)

 したがって、補正がなかったものとして扱われる


[補正制限に違反する場合]

補正が新規事項の追加にあたるときは、17条の2③違反として、下記のとおりになる。

()出願拒絶の理由(491)となる。

()特許無効の理由(123条①1)となる。

()最後の拒絶理由通知に応答する補正又は拒絶査定不服審判請求時の補正については、補正却下の対象(53条、159条①、163条①)となり得る。

 (理由)最後の拒絶理由通知に対する補正が不適法である場合についてまで出願拒絶の理由とすると、その補正が不適法である旨の再度の拒絶理由通知(50)が必要となる。

さらに、その拒絶理由通知に対しては補正が可能であるから、その補正についてさらに審査を行う必要がある。

そのため、審査が繰り返し行われることになって、審査の迅速性を確保できなくなる。

そこで、最後の拒絶理由通知に対する補正が不適法である場合には、当該補正を却下することとした。


②補正がいわゆるシフト補正にあたるときは、17条の2④違反として、下記のとおり

になる。

()出願拒絶の理由(491)となる。

()50条の2の規定にもとづく通知が併せてなされた拒絶理由通知に応答する補正又は拒絶査定不服審判請求時の補正については、補正却下の対象(53条、159条①、163条①)となり得る。

() 特許無効の理由(123条①)とはされていない

 (理由)これは、発明に実質的に瑕疵があるわけではなく、補正後の発明について審査を受けるためには2以上の特許出願とすべきであったという手続上の瑕疵があるのみで、そのまま特許されたとしても直接的に第三者の利益を著しく害することにはならないからである


③最後の拒絶理由通知後の補正が請求項の削除、特許請求の範囲の限定的減縮、誤記の訂正、又は不明瞭な記載の釈明を目的としたものと認められないときは、特17条の2⑤違反として、補正却下の対象となる。(53)

(理由)17条の2⑤の規定に違反する補正は、新規事項の追加するもの(17条の2)とは異なり、発明の内容に関して実態的な瑕疵をもたらすものではないからである。

・補正が却下されると、補正前の状態に戻るため、通常は既に通知された拒絶理由通知が解

消されていないことになるから、そのまま拒絶査定となる。

 


《要約書の補正》 条文:特17条の3

(原則)

・特許出願の日から13月以内に限り要約書について補正をすることができる。

(17条の3)

(例外)

・特許出願の日から13月以内であっても、出願公開の請求があった後には補正をす

ることができない

(理由)出願公開の請求があると、その特許出願について出願公開の準備に入ることから、要約書の補正を認めないこととした。

 

 

《訂正に係る明細書等の補正》 条文:特17条の4①・②

[訂正に係る明細書等を補正できる時期] cf.)17条の4①・②

〔特17条の4(訂正に係る明細書、特許請求の範囲又は図面の補正)

特許無効審判の被請求人は、特134条①若しくは②又は③、特134条の3①若しくは②または特153条②の規定により指定された期間内に限り134条の2①に訂正の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる

訂正審判の請求人は、156条①の規定による通知がある前(同条②の規定による審理の再開がなされた場合にあっては、その後更に同条①の規定による通知がある前)に限り訂正審判の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる